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奨学金訴訟、100倍に

 奨学金を返さないとして、訴えられる人が急増している。貸した側の日本学生支援機構(旧日本育英会)が2012年度に起こした訴訟は6193件で、8年前の100倍を超えた。借り手の貧困に加え、機構側の回収の強化が背景にある。国も、返済制度の改善に乗り出した。
 「どうしていいかわからず、怖かった」。札幌市の20代女性は2月、機構から訴えられた。大学時代に借りた奨学金約240万円のうち、未返済の約170万円を求められた。
 2007年の卒業後に就職し、返済を始めた。出産のために休職したが、子どもを預ける場所が見つからずに復職を断念。さらに夫の勤める会社が倒産した。11年9月、困窮を理由に返済猶予を機構に申請。認められたが、その後、毎年必要な猶予の更新手続きをしなかったとして、翌年10月から延滞扱いにされていた。

「100万円か150万円を一括で払わないと、訴訟です」「あなたの話は聞けません。今のままなら(訴訟に)負けますよ」

女性は提訴される直前、機構側に、そう言われた。

 だが、弁護士に相談して機構に返済猶予を改めて申請すると、困窮状態にあると認められて提訴はあっさり取り下げられ、延滞金も不要となった。女性は「自分だけでは動けなかった。支払いが猶予されなかったら、生活がどうなっていたか……」と振り返る。

 猶予の申請時、更新手続きの説明を受けたかははっきり覚えていないが、「訴訟前に改めて教えてくれれば、弁護士に相談せずにすんだのに」と思う。

 昨春提訴された名古屋市の50代男性は、20代のおいが奨学金約190万円を借りた際に保証人となった。おいが返していない約170万円を求められた。
 おいは発達障害で会話が不自由。卒業後に就職したが、まもなくうつになって仕事を辞めた。返済猶予の対象となる生活保護受給者だが、病気などのせいで、自分では猶予を申請できなかった。男性は司法書士の助言で提訴後に返済猶予を申請し、認められた。
 この問題に取り組む池田賢太弁護士(札幌弁護士会)は2人の例とは別に、「猶予が認められるはずなのに、提訴されて返済続行の和解案を受け入れてしまう『泣き寝入り』事例がある」と指摘。返済を続けても延滞金に充てられて元金が減らない例や、自己破産する例もあると話す。

■延滞33万人 機構「猶予制度を周知」
 日本学生支援機構は、約131万人に、計1兆815億円の奨学金を貸し付けている(2012年度)。無利子で月5万4千円を借りると、4年間で計約260万円。15年の完済計画ならば、毎月の返済額は約1万4千円になる。有利子の年利は7月現在で0・79%(利率固定方式)だ。
 ただ、就職難などを背景に延滞額は年々増加。12年度末時点の延滞は33万人で計925億円に上る。3カ月以上の延滞者を抽出して調べた結果、8割が年収300万円未満だった。

 機構は、09年の民主党政権による事業仕分けなどで、債権回収の甘さを指摘された。このため、債権回収会社に業務を委託し、回収を強化した。まずは延滞者に電話で催促。3カ月以上の延滞者の情報は、加盟している個人信用情報機関「全国銀行個人信用情報センター」に提供する。クレジットカードやローンの利用が制限される恐れがあるが、返済終了から5年後に削除される。12年度末までに2万件以上を登録した。
 9カ月以上の延滞者には事前通告の上、裁判所を通じて支払いを求める督促状を送付。異議申し立てがあれば提訴する。機構の担当者は「今後も猶予制度の一層の周知に努めたい」と話す。奨学金問題対策全国会議共同代表の大内裕和・中京大学教授(教育社会学)は「返済猶予や減額制度をわかりやすく説明し、提訴は本当に必要な相手に限るべきだ」と指摘する。(佐藤恵子)

■年収連動の返済制度 文科省、18年度返済開始から
 文部科学省の検討会は先月、年収額に応じて返済月額が変わる「所得連動返還型奨学金」の導入を提言した。現在も年収300万円以下なら返済を先延ばしできるが、さらに幅広く、経済力に応じて、月々の返済額が減らせるように弾力化する。担当者は「所得に合わせた返済制度は世界的な流れ。これまでがおかしかった」と説明する。
 2016年に国民全員に番号を割り振る共通番号(マイナンバー)制度の運用が始まると、行政側は納税の状況や会社が提供する従業員の給料などが把握できる。文科省はこれを利用し、18年度に返済を始める人から対象にする考えだ。また、現在は全体の3割に満たない無利子型を増やし、返す必要がない「給付型」の創設も議論する。(高浜行人)

■奨学金返済に関する現行の救済制度
 <返済の猶予> 年収300万円以下(自営業などは所得200万円以下)を目安に最長10年を猶予。災害や傷病、生活保護受給などの場合、猶予期限はなし。産休や育休中も猶予される。毎年の更新手続きが必要。
 <返済月額の減額> 経済困窮や災害、傷病などの場合、一定期間は毎月の返済額を半額に。毎年の更新手続きで最長10年。このほか、死亡や心身の障害によって返済できなくなった場合、状況に応じて全額または一部を免除。

※詳細は日本学生支援機構のホームページ(http://www.jasso.go.jp/)

との報道がありました。
朝日新聞8月10日05時00分

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